ITインフラ系エンジニアの日記

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昨年末の日韓外相会談について

2015年12月28日、日本の岸田外務大臣と韓国の尹韓国外交部長官との間で日韓外相会談が行われ、共同声明が発表された。発表された時、私は実家にいたのでテレビニュースで知ったのだが、きっとネットでは売国奴とか言われているんだろうな、と思った。

 

ニュースを見た限りでは、

  1. この声明を以て、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に終結した。
  2. 韓国に基金を設立し、日本から10億円拠出する。
  3. お互いに国際社会でこの問題について非難合戦を行わない。

という3点が合意されたと理解し、

 

「韓国にお金は出さなきゃいけないけど、もう蒸し返さないという言質を取ったな」

 

というくらいの感想を持った。

 

3日夜に実家から戻り、参考にしている評論家の方のブログや動画サイト、Twitterまとめサイトをザッと見ると、予想通りと言うか、ほとんどの人がこの共同声明を「失策」として論じていた。

 

いったいどれほどの「失策」なのかと驚きつつ、一次情報に当たった。

外務省のHPの 大韓民国 | 外務省 というページの下部に、本件ついて3つリンクが張られている。

 

この内、一つを掲載しておく。

www.mofa.go.jp

 

【1.事実整理】 

まず、上述したページに記載されている事実を整理する。

 

岸田外相と尹長官がそれぞれ発表した。詳細は上述したページを参照するとして、ざっくりと要約した。

 

岸田外相の発表

  1. 当時の軍の関与の下にたくさんの女性の名誉と尊厳を損なってきた。
  2. 安倍内閣総理大臣は心からの反省と謝罪を表明します。
  3. 日本政府はこれまでも真摯にこの問題に取り組んできた。
  4. 韓国政府が元慰安婦への支援を目的とした財団を設立し、日本政府から10億円を拠出する。
  5. 韓国政府が財団を作り、日本政府が10億円拠出することを前提として今回の発表でこの問題が最終的かつ不可逆的に解決したとする。
  6. 「5」を着実に実施する事を前提に、お互いに国際社会で非難し合うのはやめます。

 

尹長官

  1. 日本政府が行ってきた本問題に対するこれまでの取り組みを評価する。
  2. 岸田外相の発表した「4、5」を以て、この問題が最終的かつ不可逆的に解決したとする。
  3. 韓国政府は日本政府の実施する措置に対して協力する。
  4. 在韓日本大使館前に設置されている少女像の撤去について、適切に解決するよう努力する。
  5. 韓国政府は日本政府が10億円拠出したら、お互いに国際社会で非難し合うのはやめます。

 

【2.どこが「失策」なのか】

私が見た限り、「失策」とされている点は

  • 当時の軍の関与の下にたくさんの女性の名誉と尊厳を損なってきた。

という表現だ。実はこの表現は河野談話とほとんど同じである。

 

河野談話は実は河野「談合」であったということは国会の調査で判明している。建前は日本政府が自主的に発表したことになっていたが、実は韓国政府と協議を重ねていた。また、韓国政府と協議をしていたことは表に出さないようにしていたのである。

 

一方的に日本の官房長官が出した談話であると建前上はしたため、その内容を韓国は都合の良い時は利用し、都合の悪い時は無視する事で、現在に至るまで日韓関係の重たい課題となっている。

<例>

日本政府は謝罪していない!と言いつつ、日本政府は軍の関与を河野談話で認めた!としている。

 

今回の共同声明はお互いに

「韓国政府が財団を作って、そこに日本政府が10億円拠出したら、最終的かつ不可逆的に解決したとする」

 と発表したため、河野談話の時のように韓国は都合よく利用することができなくなった。

 

日本政府としては昨年夏の安倍談話に書いてある

あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。 

 という内容を具現化したということだろう。また、韓国政府が「財団を設立する」ということが「10億円の拠出」と「最終的かつ不可逆的な解決」の前提となっている為、

「あとは韓国さん、国内の元慰安婦の方や支援団体等との調整頑張ってね」

ということなのだろう。

 

私は上記のように考えているので、この共同声明は「失策」ではなかったとの立場だ。

 

【3.アメリカの歓迎】

さて、この共同声明に対して、アメリカ政府が歓迎の意を表明した。ホワイトハウスのHPに記載がある。

Statement by National Security Advisor Susan E. Rice on the Republic of Korea-Japan Agreement on “Comfort Women” | whitehouse.gov

 

これを読むと

The United States congratulates the Governments of Japan and the Republic of Korea on reaching an agreement, which they have made clear “finally and irreversibly” addresses the tragic treatment of "comfort women" during World War II. 

とあり、日韓両国が「最終的かつ不可逆的に慰安婦問題について合意したことを歓迎する」と書かれている。

 

アメリカは米韓同盟を結んで置きながら最近中国へ傾いている韓国をつなぎとめるために、日韓関係の改善をうまく利用したい、と考えているのだろう。日本としてはアメリカを味方につけておかねばならない。

日米どちらにとっても損の無い結果になったと言えよう。

 

また、重要な点として、これまで慰安婦と言うと「sex slave」(性奴隷)という表現が国際社会ではされていたと聞くが、ホワイトハウスでは「comfort women」という表現になっている。

 

【4.慰安婦問題の韓国国内問題化】

韓国側はまず国内世論をまとめ、財団を設立しなければならない。そして、設立後、日本からの拠出金を元慰安婦の支援へ使わなければならない。従って、元慰安婦補償の問題は韓国国内の問題となってしまったのである。

国際社会で「日本はこんなに悪い事をしました。」「補償もしていないのです!」という主張のうち、後者は使えなくなった。

 

【5.今後、日本政府が行うべき事】

今後日本政府が行うべき事は、アメリカやオーストラリアに設置された/されようとしている少女像や国際社会に根付いてしまった「性奴隷」という印象を拭うために、今後民間で努力されている団体への支援、国際社会での主張が必要だ。

 

今回の共同声明に対して賛否両論、右側の人からは非難轟々である。韓国政府のこれまでのゴールポストを動かす態度を見ると、「最終的かつ不可逆的に」といっても信じ難いが、だからといって、今回の問題が間違いであったとも言い難い。

なぜなら、

  1. 慰安婦問題の「補償問題」については韓国の問題とする事ができた
  2. アメリカからは歓迎された
  3. 日本政府のこれまでの態度と矛盾する内容では無い

からだ。 

 

今後、慰安婦問題で日本政府がするべきことは以下の4点だ。

  1. 軍の強制はなかったことを国際社会へ主張する。
  2. 慰安婦への補償は日韓請求権において解決済みであることを国際社会へ主張する。
  3. 世界各地で慰安婦問題に対して上記を主張している民間団体を支援する。
  4. 今回の財団への拠出は道義的責任であることを国際社会へ主張する。