元ITインフラ系エンジニアの日記

元ITインフラ系エンジニアがITのことや投資のこと、コンサルのこと等を綴ります。

羨望

1

1日の帰りの電車内は新入社員と思しき青年で溢れていた。下人は朝早くに出社したため、きっと朝も希望に燃える新入社員であふれていたのだろうな、と想像した。ビシッとしたスーツ、傷一つない鞄、黒々とし汚れの無い靴、ぱっと見ただけで新入社員とすぐわかる。下人は彼らを見て自分にもそう遠くない昔にあの時期があったのだと思った。

下人は彼らを見ていて徐々に不快な心持ちになった。なぜだろうか。下人は目をつむって考える事にした。

2

なぜ彼らを見ているとムカムカするのだろうか。身なりは自分と大差ないのに、彼らの顔は輝いている。これがまぶしいのだ。彼らは自分と同じ立場になったのにまだ学生の自由を心に抱いている。これが羨ましいのだ。

腹の内にふつふつと湧き出てくる不快な何かは、羨望、であると下人は結論づけた。下人は彼らが羨ましいのだ。自分がかつて持っていた将来への希望、野心、そして可能性を信じる心を彼らがまだ持っていることが。そして彼らが恥じらいも無くそれを発しているのが、羨ましいのだ。

3

改札口を飛び出した下人は薄暗い商店街を走って家に帰った。電車で感じた羨望、そして自らへの恥ずかしさを洗い流すようにシャワーを浴び、逃げ込むように布団へ潜った。
丸くなっていると色々な事を考え始めてしまう。学生時代の自分、新人時代の自分、今の自分、これからの自分の事を… …。